UAVグリーンレーザ測量
UAVグリーンレーザ測量(離岸堤計測レポート)
こんにちは。
本日は新型UAVグリーンレーザスキャナ「RIEGL VQ840-GL」ついて導入後、いくつかの計測テストも実施しましたのでUAVグリーンレーザ測量の概要と併せて少しレポートさせて頂こうかと思います。
UAVグリーンレーザスキャナ計測による点群モデル図(グランド)
UAV搭載型グリーンレーザスキャナは国内では2010年代に第一号機の運用が始まり、国土交通省での実用検証などを経て事業への利用も年々増加が見込まれています。
UAVグリーンレーザ測量の最大の特徴は「緑」波長(532nmの可視光線)のレーザ光を使用して河川や海岸付近など、一般的な近赤外線を利用したUAVレーザスキャナやマルチソナーボートで測量できない水部の地形を効率的に精度の高い測量ができるという点。、、、なのですが、水の濁り具合や水底の反射率などの依存度が高いため、実際、本当に計測できるかどうか分かりません。
困ったもので計測の可否を断言するのが難しい技術。という側面があります。。。
そんな泣き所の慰めとして測深の目安としているのが濁度やSecchi(セッキと読みます)です。
↑ ASTRALite Edge を用いた場合の濁度と測深の関係性
濁度計にて2回計測して平均0.955NTU この場合はグラフの赤い点、最大計測水深は8.5mが目安ということになります。
こんな綺麗な川はなかなか無いですが、、、
・・・後半につづく。
【UAVレーザ測量とUAVグリーンレーザ測量】
一般的な近赤外線を利用したUAVレーザ測量と比較してUAVグリーンレーザ測量には相対的に以下のような違いが。
①飛行の対地高度が低い ②スキャナからのビーム角が狭い ③データ解析が難しい
そしてスキャナ自体が高額、、上記の理由から工数も測量価格も高くなりがちです。(因みにUAVグリーンレーザ測量としての国の步掛などは今のところありません)
【航空ALBとUAVグリーンレーザ測量】
グリーンレーザを用いた水部の地形測量では有人による航空ALB測量が先行してありますが、大きくは測量範囲や測量精度など、その特徴に違いがあります。
航空ALBはUAVグリーンレーザ測量の10倍以上高い上空を飛行し、超広範囲なエリアを短時間で測量します。
一方でUAVグリーンレーザ測量は航空ALBより対地高度が低い分、精細かつ非常に高い精度で地形情報を取得することが可能です。
【現行で国内運用されているUAVグリーンレーザスキャナ】
2024年現在、国内でUAVグリーンレーザ測量で主に運用がされているスキャナはRIGLE社製、アミューズワンセルフ社製、ライトウェーブ社製、そして最近発売されたイエロースキャン社製の4機種です。
手前からVQ-840-GL → ASTRALite Edge → TDOT3Green (弊社にて。一同会するのも珍しいので撮影しておきました。。)
まずは簡単にカタログ性能から
現行、国内で運用されるUAV搭載型グリーンレーザスキャナのカタログスペックを並べてみました。
それではRIEGL VQ840-GL目線で進めていきます、、。。
RIEGL VQ840-GLは高精度に水面下のデータを生成するため円形のスキャン方式を採用しています。
RIEGL社カタログより引用
円形スキャンは水面への入射角を一定にし、屈折補正の精度が高まる利点があります。Navigatorでも円形スキャンが採用されております。
また、レーザクラスは3Bを使用。測深性能は現行のスキャナ群では最高の2.5セッキを実現しています。
冒頭でも記述しましたがUAVグリーンレーザ測量は、水質環境に大きく影響されたり、構造物周りの深堀箇所などはどうしても欠測しがちになるので、この2.5セッキという高い測深性能はおおいに勇気付けられます。
一般的にグリーンレーザ器の測深性能はsecchi(セッキ)で表現され、その測深は水の清濁に大きく影響されます。セッキはその清濁指標として使われています。
*セッキ板(直径30cmの白色板)を水中に沈め、それが周囲と区別できなくなる水深を1セッキとしています。例えばセッキ板が3mで判別つかなくなった場合、 VQ-840-GLでは7.5mまで測深可能という目安になります。
続いて【照射数とリターン、拡散角】はというと20万点/秒、15リターン、1mrad~6mrad(選択可能)ということで水陸双方で申し分の無いスペックです。このあたりの計測影響は近赤外レーザスキャナ関連の記事でも説明していますので参照して頂けたらと。
1点、難点がありましてVQ-840-GLはスキャナ自体が重たいのでそれを飛ばすドローンも大型になります、、。(それでも旧型タイプより2kgほどシェイプアップはしてるのですが、、)一番軽量なTDOT3Greenが2.9kgですから比べると運搬も大変です。正直、目視で水底が見える浅いところだけならTDOT3Greenで済ませたいというのが現場の本音かもしれません。
小型軽量◎なTDOT3Green
【対地高度と照射角について】
前述のとおりグリーンレーザスキャナが飛行する対地高度は相対的に低くビーム角も狭い傾向があります。よってフライトコースも必然として多くなり、その分測量時間も長くなります。VQ-840-GLの場合は推奨が75m(私たちの実験では100mくらいまでは殆ど測深に変化なしでした。)ですのでその点は走査角が40°とはいえ、これまでの事を思うと助かります。。
対地30m、ビーム角30° ASTRA Lite Edge
【千代崎海岸での実証テスト】
さて、次に三重県鈴鹿市内の千代崎海岸にて各方面にご協力いただきまして実施しましたVQ-840-GLの計測テストのレポートです。テスト計測は、現在全国で進められていますUAVグリーンレーザスキャナを用いた離岸堤の変状把握の調査を想定としたものとして実施させて頂きました。
千代崎海岸全景
【現地の状況】VQ-840-GL計測時
天気 うす曇り
風速 毎秒1m
開始時 10:00~
潮位 174cm
濁度 2.13
1セッキ 3.3m相当
【飛行設定】
AGL75m FOB 40° 速度6m/s SL60%
VQ-840-GL×PD6 Type3 浜辺で存在感を出してます。。
因みに搭載ドローンは同じ名古屋に拠点を持つプロドローンさんのMAX30kgのペイロードを持つPD6 Type3です。当たり前ですが国産です。
【現地の状況】TDOT3Green
天気 晴れ
風速 毎秒1m
開始時 11:20~
潮位 132cm
濁度 2.1
1セッキ 3.3m相当
【飛行設定】
AGL40m FOB 90° 速度6m/s SL60%
TDOT3Green×Matrice300
▼一部ピックアップします。(オルソ)
▼今回の計測データを視覚的に見やすくしたものです。
VQ-840-GL オリジナル(反射強度図)
円形スキャンの状態が確認できます。(赤線は下の断面位置 画面右が沖側)
▼離岸堤を挟んでの断面図です。
VQ-840-GL
データ上の最大測深8.9m
TDOT3Green
最大測深3.4mまで(離岸堤より沖側は欠測)
今回の測深検証ではVQ-840-GLは対象エリア内の最大水深8.9mまで欠測することなく測量することができました。カタログスペック2.5セッキ以上の測深を記録しています。
離岸堤付近では沖側の水中構造物の形状もはっきり捉えていますし海岸全体のインフラ点検に問題なく利用できそうです。またマルチソーナー測深を併用することも無いのでコスト効率の高い点検が実施できそうです。時間やドローン機材の都合上、今回は実施できませんでしたが、どこまで測深できるか改めて実施できればと思います。
一方、TDOT3Greenについては3.4mまでの測深に留まるため、この現場(離岸堤)での調査には難しさは感じましたが地形を捉えた箇所は微細に表現されていますので、エリアや潮の状況を把握しながらケースバイケースで上手にVQ-840-GLと併用していければと感じるところです。
今回はご協力頂けた海岸での検証でしたが、樹木が覆われる水面下の計測状況や砂浜、リーフなど様々な環境での計測実証を重ねて、機器の特性、UAVグリーンレーザ測量について理解を深めたいと考えています。
本日は、ここまで有難うございました。